2014年6月27日金曜日

創業補助金の完了報告

創業補助金の完了報告がようやく終わりました。

昨夜(というか今朝)の朝5時までかかってラストスパート。
当初予定よりかなり使用金額が減ってしまったのですが、
それでも書類は厚さ2cmを超えました。

反省点は多々あります。

申請は、1つの購入ごとに「仕様書」「見積書」「発注書」「納品書」「請求書」「支払いが確認な資料(領収書など)」を揃えるのが基本。
私は「書類をいっぱい揃えなければならない!」とテンパってやたら見積書をもらって来てしまいました。
そのくせ購入の決断ができなくて、そうこうしている間に見積書の有効期間が切れ、
そのままお蔵入りになった購入案件も。

そして、今回の補助金は「申請後認められれば、使った金額の2/3が後で帰ってくる」
というタイプだったのですが、私はこの2/3マジックに惑わされ
「これは本当に必要か」
「万が一2/3が戻ってこなくても買うべきか」
「いやせっかくなのだから、この期間に買ってしまった方がお得なのでは?」
「本当に申請が認められるか不安」
と堂々巡りをしてしまうこともしばしばありました。

事業のスピードアップを図るなら、自分の意思決定のスピードを上げなければならない
と痛感しています。

しかし、創業直前のタイミングでこの補助金が公表されたのは幸運なめぐりあわせでした。
そして、補助金採択事業の事例紹介として取り上げていただけ、
ショップへのアクセスが上がったのもありがたいことでした。

このご恩を返すためにも、「もっといっぱい売って、人を雇って、いっぱい納税する」
を早く実現したいです。


この創業補助金の本年度バージョンは6/30が締切。
締切1営業日前の今日は、受付にたくさんの人が並んでいました。

私がこのブログを書いている今も、申請書をブラッシュアップされている方も多いのでしょう。
締め切りまであと3日弱。
悔いのないようがんばってください!

2014年6月20日金曜日

個人輸入のはじめ方

今週、立て続けに「輸入をやってみたいのですが、どうしたらよいのでしょうか?」と質問を受けました。

このブログで私のドタバタ起業顛末記は書いていますが、
「情報としてまとまっていない」と感じたので、まとめてみます。

(ANNA GRIFFIN物語は続きます。しばしお待ちを。)


1.MIPROを活用

MIPRO(ミプロ)は個人輸入をサポートする一般財団法人です。
MIPROのサイトでは、輸入に必要な情報がぎっしり詰まった冊子が無料でダウンロードできます。
http://www.mipro.or.jp/
また、無料で輸入の相談を受け付けています。
窓口は東京池袋にしかないのですが、Webや電話での相談もOKです。
QA集も参考になります。


2.仕入れ先の見つけ方

主に4つの方法があります。
1)友人・知人からの紹介
2)バイヤー向けサイトで開拓(BUYMAやeBay,アリババなど)
3)海外見本市で開拓する
4)現地のマーケットで発掘する

1)は「以前海外に住んでいてその時のつてで」等のケースです。

2)は要英語力。既にやっているショップさんも多いかもです。

3)が王道だと言われています。
見本市に出展できる企業というのはそれなりに信用があり、また実物も会場で確認できるので効率がよいとされています。
しかしメジャーな見本市では既に日本に代理店があるメーカーも多くなります。
また、その場で買って帰れることはまずなく、注文し、お金を支払い、商品の到着を待つ、
というプロセスが必要となります。

4)は市場での買い付けも含まれます。
その場で買い付けて持ち帰えるのが最も手っ取り早い方法。
全くの初心者はまずはここからとよく言われました。
3)と組み合わせて、見本市の前に市価を把握するためにも一度マーケットに行ってみることをお勧めします。


3.見本市情報

JETROのサイトの情報が一番充実しています。
http://www.jetro.go.jp/j-messe/
その昔はJETROが輸入もサポートしていたのだそうですが、
現在は「輸出&海外進出はJETRO」「小口輸入はMIPRO」と棲み分けがされているのだとか。

けれど全く輸入の相談を拒否している訳ではありません。
貿易サポートのイベントもたくさん。
MIPROとJETROのメルマガは購読を登録しておくことをお勧めします。


4.見本市への参加申し込み

バイヤーとして事前に申し込み、現地に赴きます。
主催者のサイトで直接登録することもできますが、
アジアやマイナーな見本市では、その国の商務省の出先機関@日本を通じて申し込むとホテルの無料宿泊などの特典がつくことも。
また、通訳の手配など様々なサポートをしてくださるので、要チェックです。
※見本市によっては有料だったり資格審査があったりします。


5.見本市に行く準備

事前に用意すべきものは3つ。
1)英語の名刺
2)支払手段の準備
3)輸送方法の確認
です。

1)名刺には、オリジナルドメインのメールアドレスやURLがあると信用性が増すように感じます。
また、国によってはLINEやSkypeのIDが書いてあると喜ばれることもあります。

2)支払方法は、欧米はクレジットカード、アジアでは銀行振込が多いようです。
事前に、カードの限度額や暗証番号を確認したり、取引先の国への送金事情を調べておくくらいはやっておいた方がよいと思います。
コスト計算には諸手数料も加えなければいけませんし、銀行経由の送金は手数料が意外に高いのです。

3)FedExなどのアカウントを持っていると「着払いで送って」と言うだけで商談がシンプルになります。
但し、着払いを選択すると日本の料金体系が適用されて割高になることも。
小口輸入者の私たちは、輸出元の意向に従うしかないことも多々あるのですが、
あらかじめ送料の目安を把握しておくと安心できます。


あとは、飛行機とホテルを手配して飛び立つだけ!


以上、超ざっくりとした、個人輸入のはじめ方(着手編)でした。

2014年6月9日月曜日

ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ

お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その2です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

私は息を切らせながら心優しきおじさま達が運営するブースにたどり着きました。
そんな私を見て、顔見知りのおじいさん販売員はびっくり。
接客中だったのに商談を中断して私に声をかけてくれました。
「おや、ジャパニーズガール、こりゃまたようこそ。
今日は一体どうしたんだね?」

私はメーカーのセールスマネージャーの彼が来る前に責任者に話を通しておかなければと思い、焦りながら説明しました。
「Bobはいますか?私は今すぐに彼と話をしたいのです。
このキャンドルのメーカーのセールスマネージャーと会って」

私の表情から何かを察したのでしょう。
彼は受付にいる案内嬢を呼んで、Bobを呼んでくるよう指示しました。

そして別のスタッフを呼び
「わしゃ自分のお客さんがいるから、あとは彼と話しなさい」
と引き継ぎをしてくれました。

ありがとう。

私は商談の邪魔をしてしまったことを彼と彼のお客様に詫び、
今日はじめて会うスタッフさんに自己紹介をしました。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

「初めまして。私は日本から来ました。そして日本に住んでいます。

('I came from Japan.'とだけ言うとルーツなのか住居なのか識別がつかないようで
'Do you live in Japan? 'と聞かれることが多かったので2日目から付け加えるようにしていました)

私はこの見本市の初日にこのブースに来て、このキャンドルをとても気に入りました。
でもOpen Price(最低注文金額)が私には少し高くて、迷っていたらBobに’できるさ’と励まされました。

そして今日先ほど、臨時出展ブースでもこのキャンドルを見つけて、日本に輸入にできるか聞いたのです。
すると彼はメーカーのセールスマネージャーで、日本への輸出はイギリスの代理店を通さなければいけない。
Bobの代理店は日本へキャンドルを売ることを禁止されていると言いました。

私はトラブルを望みません。
Bobに、日本へ輸出できることを約束していないと言って欲しいんです」

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

なんとか伝え終わった時、どこからともなくBobがやってきました。

「ああ、Bob!
私はトラブルを起こしてしまうことを恐れています。
私は今日、このキャンドルメーカーのセールスマネージャーに会いました。
彼は、えっと」

私が言葉に詰まっていると、先ほど相手をしてくれたスタッフが、
早口の英語で手短にBobに伝えてくれました。

Bobは言いました。
「わかった、わかった。でも何も問題はない。
まずは落ち着いて。そこに座って。そうだ、コーヒーとクッキーはどうだい?」

私はここ数日間で、スタッフは何よりもブースの雰囲気づくりに心を砕いていることを学んでいました。他のお客様もいる前で取り乱してもらっては困るのでしょう。

とにかく伝えるべきことは伝えたし、彼に従ってコーヒーをいただこうかな、と思った瞬間、
あのセールスマネージャーがやってきました。

彼はすぐに私を見つけ、不敵に微笑みました。
「やあ、また会ったね」
そしてBobに向かって「Bob、きみに話がある。契約についてだ」と言いました。

私が聞き取れたのはここまで。
すぐに2人は激しく言い合い始めました。身振り手振りが大きく、どんどんお互いの顔が近づいてゆきます。英語は全く聞き取れません。でも、よくない雰囲気であることは確かです!

「ちょっとまって、誤解があります」
私が口を挟もうとすると、先ほどのスタッフが私の前に回り込みました。

彼はウインクをしながら、ことさらゆっくりと話します。
「マドモアゼル。折角ですから私たちのキャンドルをゆっくりご覧になりませんか?
私はこのキャンドルを3年間売っています。
このキャンドルに関することなら、なんでも質問に答えられると思いますよ」と。

むむむ。
私はここを立ち去った方がよいようです。
私は深呼吸をしてから、彼に従うことにしました。

「それはいいアイデアですね。お願いします。
けれど、私はマドモアゼルでなくマダムですのよ。ムッシュー?」

「おや、それは失礼しました。マダム、こちらへどうぞ」
彼はにやりと笑いながら私をエスコートし、大きな棚の向こう側へ案内してくれました。

棚の向こう側へついた私たちは、顔を見合わせて笑いました。

「ムッシュー、ありがとう。
あなたのおかげで最悪の事態は避けれたみたい」

「どういたしまして、マダム。
でも私はまだあなたの名前も知らないんですよ」

そういえばそうです。私はあわてて名刺を差し出しました。
彼も私に名刺をくださいます。

私は改めて自己紹介をし、お詫びをしました。
「私は日本でグリーフケアのギフトを販売する仕事をしたいと思い、起業したばかりです。
昨年まではITエンジニアでした。
私はこの業界についてよく知らないし、アメリカの見本市に来るのも初めてです。
私のせいで、あなたのボスの立場が悪くならなければよいのですが」

「へぇ、そうだったのですか。でもあなたの対応は適切でしたよ。
彼は今、OpenPriceについて話しただけだとマネージャーに弁明しています」

私の相手をしながら聞き耳をたてているとは。なかなか有能なスタッフのようです。
「そうなんですね。あなたがBobへ手短に話してくれたおかげです。
ありがとう」

一気に打ち解けた私たちはいろいろな話をしました。

彼はフロリダ半島のタンパに住んでいるということ。
海と太陽がきれいな街だそうです・
そして、タンパでこのキャンドルの代理店をしていて、
このアメリカズマートの期間中だけセールスの応援に来るのだそうです。

(タンパはアトランタのずっと南。フロリダ半島の真ん中東側にあります。
数日前までサッカー日本代表がキャンプをしていた土地です。)

そして、このキャンドルについていろいろと教えてくれました。
一番人気があるのは香り。定番商品の香り。
クリスマスシーズンによく売れる香り。
アメリカではキャンドルはキッチンやリビングで使う物だ。
などなど。

そして、このメーカーの代理店に対する数々の素晴らしいサービスを教えてくれました。
OpenPriceは少々高いけれど、木製の什器が無料でサービスされること。
アメリカ国内なら送料は全て無料で、どの代理店から買ってもメーカーから直送されること。
そして販売店内を競わせサポートする様々なコンクールのこと。

かなり完成されたビジネスモデルを構築している会社だと感じました。

私はため息をついて言いました。
「聞けば聞くほど魅力的なキャンドルと会社です。
私もこのキャンドルを日本で売りたい。
でも、私はイギリスの代理店を通じて買わなければならないのでしょうか?」

彼は残念そうに言いました。
「アメリカでは契約は絶対ですからね。
それにセールスマネージャーの言うことを覆すのは難しいでしょう。
オーナーの意向でも変えないない限り」

アメリカ社会における契約の大切さは私も知っていました。
私は、13年間アメリカ系のコンピューターメーカーで働いていたのです。

「契約書に書いた期日は何が何でも守る義務がある。
契約書に書いてないことを勝手にやる権限はない」
そんなトレーニングを長年受けてきました。

私がその難しさを崩せることができるとすれば、グリーフケアギフト事業にかける想いだけです。

私は彼に起業の動機を説明しました。

日本では、毎日仏壇にお線香やろうそくを灯す習慣があること。
けれどろうそくには香りがなく、無個性であること。
家族を亡くした時に、もっと個性のある線香やろうそくがあればよいのにと思ったこと。
そして、このろうそくは私のコンセプトにぴったりだということ。
などなどと。

彼は私の話を、ところどころ質問をしながら、じっくり聞いてくれました。
そしてしんみりと言いました。
「それは素敵なビジネスプランだね。
あなたが私のようにBobからこのキャンドルを買えるとよいのだけれど」

その時、にわかに棚の向こう側が賑やかになりました。
私と彼は顔を見合わせました。

さきほどまでけんか腰だったセールスマネージャーとBobが仲睦まじく、
小柄な若い男性をうやうやしく囲みながらこちらへやってきました。

「ようこそおいで下さいました」
「売り上げは順調ですよ」
「今日は日本からのバイヤーも来ているのです」
「ええ、我々のキャンドルに興味があるとかで」

セールスマネージャーとBobは笑顔で話しています。
先ほどまでの険悪な雰囲気は一体どこへ?!
そしてこの男性は何者なのでしょう?

私とスタッフが戸惑っていると、その若い男性が私に握手を求めてきました。

顔を見ると、文句のつけようがないイケメンです。

彼は何か英語で自己紹介したようなのですが、私は聞き取れませんでした。
そして、彼ら3人はあわただしく商談へと戻って行きました。

私は、ずっとついていてくれたスタッフに助けを求めました。
彼はぽかんとした顔をしています。

「ねえ、あの人は一体なんだったの?」
「Oh my God ! 彼はオーナーだよ!このキャンドルの創始者の息子で今のオーナーだよ!
僕は3年間このキャンドルを扱っているけれど、今日はじめて会ったよ!!」

えぇっ。あの若者がオーナー?!

「本当だよ、僕が君にさっき渡したカタログ。
この1ページ目に載ってるでしょ」

分厚いカタログをめくると先ほどの彼の写真がサイン入りで載っていました。
どうやら本当のようです。
しかし彼はこの会社のオーナーにしては若すぎです。学生にさえ見えます。

「君は正しい。彼は昨年まで大学生だったんだ。
彼は3年間でこの会社をここまで大きくしたんだ。」

なんとまぁ。そんな学生起業家がこの会社のオーナーだったとは。

驚きましたが、驚いている場合ではありません。
これって、大変ラッキーなチャンスなのではないでしょうか。

私の頭には「エレベータースピーチ」という言葉が浮かびました。
会社員時代に新人研修で習った言葉です。

新人研修の講師はこう言っていました。

”常に自分の仕事の問題点を1分間で話せるようにしておきなさい。
あなた達はI社の社員として、キーパーソン(自社の社長やお客様の偉い人)に突然会って話す機会があった際に、端的に課題を説明する必要があります。
これをエレベータースピーチと言います。
この業界には、エレベーターなどでキーパーソンと一緒に乗り合わせた際に手短に話し、抜擢のチャンスを得た人がたくさんいます。

現実には、そんなチャンスが訪れることはめったにありませんが、この習慣を身に付けることによって常に大局的な観点から自分の仕事を眺めることができます。
端的に自分の仕事の問題点と解決策を話せるように、日ごろから考える習慣を身に付けるようにしなさい。”

ピカピカの無邪気な新人社員だった私は、この話を気に入り、
通勤電車の中で「今の仕事の一番の問題点と解決策」と考えるのを日課にしていました。

会社員時代にはついぞその機会に恵まれなかったエレベータースピーチのチャンスが、今私の目の前に。

私はタンパから来た彼に相談しました。
「ねぇ、私はオーナーと直接話をしたい。1分だけ時間をもらえないかしら」
さすがの彼もうろたえます。
「どうなんだろう。僕にはそんな権限はないし、彼はとても忙しい人だと聞いているよ」

興奮さめやらぬ私たちが作戦会議をしていると、イケメンオーナーが一人でやってきました。
今度は私にだけ握手を求め「先ほどは失礼しました。お会いできてうれしいです」とおっしゃいます。

私はすかさず彼を見つめながら言いました。
「私は、自分があなたのキャンドルを日本に紹介するのにベストな人間だと思います。
私に1分だけ時間を下さい」

彼は私の迫力に驚いたようで、うなずきました。
「OK、話を聞きましょう」

私の背後にいたスタッフが息をのむ音が聞こえました。

私のエレベータ―スピーチの始まりです。

 ☆.。.:*・゜☆ 続きます。


アメリカズマートのバイヤーズガイド。
私は毎晩ホテルでこの電話帳のように厚い冊子と格闘していました。

2014年6月3日火曜日

ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー

間が空いてしまいましたが、連載(?)再開です。
今回はお取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

「Take your wayかぁ。いいこと言ううなぁ」
私は、彼の言葉をかみしめながらホテルの部屋に戻りました。

自室の前まで来てカードキーを取り出した途端に、大切なことを思い出しました。
「カタログをくださいって念押しするのを忘れた!」

ああ、私はやっぱり素人バイヤー。おまぬけな話ですが、今更仕方ありません。
明日の商談に集中!です。

私は落ち着くためにシャワーを浴びてから、改めて今までのやり取りを思い出しました。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

私がそのキャンドルを発見したのは、アトランタのアメリカズマーケットに初めて足を踏み入れた日の午後でした。

そのキャンドルメーカーのブースは、そこだけデパートのような高級感のある売り場になっていました。
ティーライトキャンドルから巨大なガラスポットまで、大小さまざまなサイズのキャンドル。
色はシンプルに白だけなのですが、香りはざっと50種類。
どの香りも控えめでセンスが良く、心地よい香りです。
どの香りにもひとひねりある名前と物語がついていて、心惹かれます。

そして何より、ラベルや展示用の什器、小売店向けのサービスが充実。
コンセプトや経営理念などもシンプルで明確です。

最低注文金額は750ドルから。
他のお店に比べると少々高額で悩むところですが、出せない金額ではありません。

この完成度合なのに、日本に販売代理店は未だないのだそう。
ためしにブランド名を入力してネット検索してみましたが、確かに日本語のページは見当たりませんでした。

まだ無知な新規バイヤーそのものだった私は、
「私はなんてラッキーなのだろう。アトランタまで来るとこんな大チャンスがころがっているのだ!」と無邪気に心をときめかせていました。

接客してくださる方は、メーカーでなく代理店の方で、年配のおじさま・おじいさまが中心。
「おお、きみは日本からはるばる来たのかね。一人で?! アトランタへようこそ!」
「きみの英語は上手だね。僕なんて生まれてから今まで英語しか話したことがないよ」
「本当だ、いい英語の先生についたのだろう」
と暖かく迎えてくれました。

説明もシンプルかつ明確で分かりやすく、
「この代理店とならよいお付き合いができそうだ」と感じました。

唯一気になったのは「日本に輸出できますか?」への回答。
「ああ、できるはずだよ。なぁ?」
「さぁ。マイクに確認した方がいいんじゃない?」
と、急に曖昧になりました。

気になった私は、このキャンドルメーカーの公式サイトから質問をしました。
「私はあなたのろうそくを日本へ輸入することができますか?
日本に既に代理店があるのならば教えてください」と。
すると、超長文の格調高い英語で返信がありました。

そのメールにはこのように書かれているようでした。
「南北アメリカ以外は、我々イギリス代理店の配下である。
したがって、御社はイギリス代理店である私と契約を結ぶ必要がある。
今までにも日本の業者から問い合わせがあったが、我々が期待する規模でなく
取引は成立していない」

アメリカで作っているろうそくなのに、イギリスから輸入しなければならないって、本当に?!

英語力に自信のない私は、英語の得意な友人に助けを求めることにしました。
簡単に事情を説明し、「ちょっと訳してくれませんか?」とメールを添付します。
ちなみに、パソコンを持ってこなかったので、全てiPhoneでのやり取りです。
何度も手がつりました。

時差が上手く作用し、翌朝には友人から返事が届いていました。
「そう、正解。あなたはイギリスの代理店から仕入れなければならないみたい」
とのこと。なんてこったい。

アメリカから直接輸入するだけでも、最低注文金額と送料が不安なのに
イギリスを経由していたら採算が不安すぎます。

諦めきれない気持ちを抱えたまま、他のキャンドルメーカーを探すべく
ギフトショーのカタログを見直していると、
同じ代理店が、臨時出展エリアにもブースを出していることを発見しました。

このブースに行ってみよう。
そして、何食わぬ顔をして取引できないか聞いてみよう。

アトランタに来るまでは「私はこの業界では信用も何もないのだから、せめて誠実でいよう」
と心に決めていた私の初めての悪巧みです。

当初、この作戦は成功したかのように見えました。

臨時出展エリアブースには今までに見たことのない若く体格の良いスタッフがいて、
愛想よく対応してくれました。
そこで、私は思い切って聞いてみることにしました。
「私は日本に住んでいるの。日本に輸出する場合、送料以外に特別なチャージは必要かしら?」
と。

すると彼の表情は一転して、厳しい顔で言いました。
「No。日本には輸出できないよ。アジアはイギリスの代理店を通してもらうことになっている」
私はあえてとぼけてみました。
「えっ、そうなの?
他のブースでは日本に輸出できるようなことを聞いたのだけれど・・・」

彼はにやりと笑って、ネームプレートを裏返して言いました。
「実は僕はメーカーの人間でセールスマネージャーだ。セールスルートは僕の責任下にある。
もし、ビルディングXのブースの責任者がそういったなら、僕は彼を契約違反で注意しなければいけない」

メーカーの人間か代理店の名札をつけてスタッフをしているなんて!
私は驚きながらも慌てて付け加えました。
あの心優しい代理店のおじいさまたちが怒られてしまっては大変です。

「えっ、そうなの?!私の英語は不確かだから、聞き間違えたのかも。
今日もう一度行って確認してくるわ。
だって私はどうしてもこのキャンドルを私の顧客に届けたいのだもの」

彼の表情は少し和らぎましたが、目は笑っていません。
「そうだね、僕も今日彼らのブースへ確認に行くよ」

大変なことになりました。
彼は、私が公式サイト経由で送ったメールの存在も知っているのかもしれません。
私は彼より早く代理店ブースへ向かわなければと思いました。

しかし、アメリカズマートのビルは広大で、複雑です。
3つのビルがところどころでつながっているのですが、そのつながり方が複雑。
しかもこの日は重要な通路が封鎖されていて、大混乱。
常勤らしきスタッフですら
「えぇーっ?!私はどうやって私の売り場に戻ればよいの?」と警備員に聞いている始末です。

私がクタクタになって、常設ブースの代理店にたどり着くと、幸いあのセールスマネージャーはまだ到着していないようでした。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

長くなりすぎたので、別の記事へ続きます。

アトランタのホテルのロビー。
不安でいっぱいだった私を、黄色いお花が励ましてくれました。