2014年4月17日木曜日

母の日用ギフトを発売しました

母の日に向けた商品の発売をはじめました。

母の日は、お母様を亡くされた方や、一人っ子さんを亡くされた方にとって
残酷な一日となります。
「ああ、私にはプレゼントを贈る人がもういないのだ」
「私はかつて母だったはずなのに」
と想いを刺激され、孤独感を感じる日なのです。

昨年、母の日の碧香堂のフェイスブックページに、
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今日は母の日。お母様を亡くされた方、お子様を亡くされた方、
双方にとって心が疲れる一日になることでしょう。
季節の変わり目でもあります。どうかご自愛ください
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と投稿したところ、複数の方から共感をいただきました。

そして、お母様を早くに亡くされた知人が、
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私は、母の誕生日が母の日に近いので、毎年この日に、母が好きだった薔薇を買います。
私にとって母の日は、母の日と、母の誕生日を祝う日です。
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と教えてくださいました。

一人息子を亡くした私にとって、母の日は身を固くしてやり過ごす日でした。
それだけに知人の習慣がとても印象に残り、
「自分なりの習慣や儀式を持っている方は、
節目の日もしなやかに乗り越えていけるのだ」
と感銘を受けました。

それ以来ずっと、
「お母様を亡くした方も、母の日を祝えるようなギフトが提案したい」
と考えていたのですが、ぴったりの商品を東京ギフトショーで発見。
母の日ギフト

※画像をクリックするとショップページに移動します。

日本最大大手のメーカーさんの商品だったので、お取引いただけるか心配だったのですが、
お取扱いさせていただけることになりました。


花瓶にもなるシンプルでスタイリッシュなグラスと、
フロートキャンドルのセット。
グラスには造花が入っており、水を注いでキャンドルを浮かべると
華やかなアレンジメントになります。

母の日は、母を偲ぶ日でもあります。
母の日の食卓にこのグラスを飾り、
在りし日の母子関係に思いを馳せていただければと思います。

もちろん、お母様がご健在な方もご利用ください。
「毎年お花になってしまう」と母の日のプレゼントに悩んでいる方にもお勧めです。

2014/4/18追記
母の日用ギフト売り場@碧香堂はこちらです。

ps.
パリ出張の際、見本市だけでなく蚤の市でも母の日用のギフト商品を探しました。
(蚤の市は「開店直後がねらい目」との情報だったので、完全に日が昇る前から品定め開始)

 あいにく、ギフトによい商品は見つからず。
市場を何度も往復し、"熱心に見る割には何も買わない"私は不思議なバイヤーだったらしく、
他の日本人バイヤーさん達に
「あの人は何を探しているのかな」「一人だし、観光客ではないよね?」
とヒソヒソされてしまいました。

2014年4月7日月曜日

ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください

マネージャーらしき女性から、カードの輸入許可をもらった私。
前回のお話参照)

次に確認すべきことは取引条件です。
・最低注文金額(アトランタではOpenPriceと呼ばれることが多い)はいくらか
・支払い手段は何か(アトランタではほとんどクレジットカードでOK)
・注文単位に制限はあるか(同じ商品を最低12個単位でetc)
・日本への送付方法は何か
これらを確認しましたが、特に問題はありませんでした。

しかし、私は初心者バイヤーかつ小額資金での創業者。
注文を決めるのにとても時間がかかります。

コストを計算して、
日本でいくらで売れるか検索して、
最低注文金額をほんの少し上回るくらいのお金で最大の効果が得られるべく、
商品構成を考えなければなりません。

この会社は6ボックス単位の注文で、
店頭に表示してあるのは1ボックス単位の金額。
カードはふすま4枚分くらいに渡って、美しくデザインされて並んでいます。
それはつまり、金額順でもなければ構成順でもないということ。
表示してある金額に6を掛けて、合計金額を考えなければなりません。

私は「とてもこの場で注文を決めることはできない!」と思いました。
(今この記事を書いていて気が付いたのですが、
最低注文金額を6で割って考えればよかったですね…)

ホテルに戻ってじっくり考えたかったので「カタログをいただけないか?」と聞くと
「ごめんなさい。カタログの在庫は切らしているの」とのお返事。
「ではメモ代わりに写真を撮ってよいか?」と聞くとそれはダメだと。

私が困っていると、スタッフさんがマネージャーの目を盗んで、私に耳打ちをしてくれました
「明日の夕方に違うマネージャーがくる。彼ならカタログを持ってきてくれるかも」と。
彼女は、おかっぱのストレートロングヘアでバービーちゃんのような体形。
体に胸元が大胆にあいたお洋服を着ており、そんなに近づかれると女性の私でもドキっとしてしまいます。

ふと気が付くと、もう見本市が終わる時間です。
私はマネージャーの女性にも聞こえるように
「ありがとう。もうこんな時間だから、また明日来ます」
と告げてブースを去りました。

スタッフの女性はウインクをして私を見送ってくれました。


翌日の夕方。
再びブースに向かうと、耳打ちしてくれたナイスバディ―な女性と
昨日はいなかった男性スタッフが座っていました。
男性は細身で物静かな雰囲気で、スーツを着込んでいます。
彼がきっと「別のマネージャー」なのでしょう。

「こんにちは。また来ました」とブースに入っていくと、男性は怪訝な顔をしました。
スタッフの女性の助けを借りながら事情を説明すると
「残念ながらカタログが届くのは多分明日なんだ。
よかったら、今ここでカードを見ながら注文してださい」と。

あいにく、その日ももう終了時間です。
「ごめんなさい。私はこの仕事を始めたばかりで即決ができないんです。
それに私はあと5日アトランタにいるの。明日以降また来ます」
私がそう告げると、男性は少し驚いた様子でした。

アトランタの見本市は、アメリカらしくとても気前のよい雰囲気。
カタログどころか、サンプルやコーヒーや食事まで気前よく振る舞われています。
それなのに、この会社は私にカタログをなかなかくれない。
私の立ち振る舞いに何か原因があるのかもしれません。

少し気になりましたが、事前に米国大使館の方から
「アジア人はデザインのコピーを目的に見本市に来る人も多く警戒されている」と聞ききました。
この会社はデザインが売りの会社ですから、仕方ないのかもと思うことにしました。

「カタログが届くのが遅れることも十分考えられる」
そう考えた私は2日後にブースを訪問しました。


その日、私はキャンドルメーカーの人とタフネゴシエーションを繰り広げた後で
今までにないくらいぐったりしていました。
それでも気合を入れ直して、トイレでメイクを直してからブースへ向かいます。

今日は例の男性が一人で座っていました。
先日とは少し違った雰囲気のファッションで、黒の革のパンツをはいています。
私が「こんにちは。カタログをもらいに来ました」と言うと、
彼は困った顔をして「それが、届いていないんだよ」と言います。

満を持してきたつもりの私は、がっかりしてしまいました。

「あれ?2日前に”明日届く”と言ってましたよね。私が誤解したのかしら」
「いや、君は正しいよ。本当にごめん」
とやり取りをしていると、外からひときわテンションの高い男性が
「ハッロ~ウ!」
と言いながらやってきました。

私の相手をしていた彼は、嬉しいような困ったような複雑な顔をして言いました。
「トラブルの元が来た。あいつがカタログを忘れたんだ!」

「ハーイ!あんたたち、何やってるの? もうお仕事は終わりの時間よ~!」
黄色のセットアップスーツを着た彼は、アクションも大振りです。

「僕らはまだ商談中だ。彼女は日本から来たバイヤーで、僕らのカタログが欲しくて毎日来てるんだ」
「私はカタログが昨日届くと聞いたのですが」
2人がかりで抗議しているのに、黄色の彼は意に介せず、
「あらごっめーん、そんなことより、ガール、あなたも一緒に食事に行きましょう!」
等と言ってきます。

アトランタの街は決して治安が良くありません。
私は毎日日没前にホテルに戻るようにしていますし、
見ず知らずの男性と食事に行くなんて考えられません!

私はそれまでの疲れも手伝って、心の中で叫びました。

(こんな治安の悪い街で見ず知らずの男2人と食事になんて行けるかぁーっ!
日本人女性をナメるなーーっ!)

しかし、英語で何と言うべきか、言葉が浮かんできません。

私の怒りが表情に現れたのでしょう。
2人の男性はあわてて、取り繕うように言いました。
「おぉ、まてまて!」
「心配するな、僕らはコレなんだ」

彼らは2人で肩を組み、胸元のブローチを指さします。
ピンクのハートのブローチ。
スワロフスキーのようなキラキラのデコレーションが一面に施されています。
よく見ると、革パンツの男性も同じキラキラのブローチをしています。

「??」私が戸惑っていると、黄色のセットアップスーツの彼は
ジャケットのポケットから、レインボーのキーホルダーを取り出して私に見せました。

確か、虹はゲイピーポルのシンボル・・・・。

改めて2人の顔を見つめると、彼らはおどけてハグとキスのジェスチャーを繰り返します。

間違いない。きっと彼らは...

しかし、こんな時は何といえばよいのでしょう。
私はこんな状況での会話を練習したことがありません。

困った私は、英語の構文のようなフレーズをひねり出しました。
「ええっと、私はあなたが言っていることを正しく理解しました。多分」

私の目は思っきり泳いでいたことでしょう。
黄色の彼は吹き出します「ぷっ。あなたおもしろい子ね!
そうよ、私たちはゲイなのよ~!」と踊りながらブースに入り、
「ちょっと待ってなさい、去年のカタログならあるかも~!」
と歌いながらバックヤードに去って行きました。

呆然とする私を椅子に座らせ、革パンツの男性が説明します。
「ごめん。驚かせてしまったね。日本人にはなじみがないかもしれないけれど、
このブローチはゲイピーポルのシンボルなんだ。
実は僕たちスタッフにはゲイが多いんだよ」と。

そのブローチは確か私に親切にしてくれた女性スタッフもしていました。
彼女が妙にボディータッチをしてきて親切だったのは、そういう意味?!

黄色の彼が戻ってきて「ごっめーん、なかった!」と私に抱きつきます。
ひぃぃ。

私の「想定内」のリミッターは完全に壊れてしまい、
私は、彼らに自分の事情を漏らしたくなりました。
「さっきは、ごめんなさい。
実は私はこの商売をはじめたばかり。今まではずっとITエンジニアだったの。
アメリカの見本市に来るのも初めてで、文化に慣れてしないの。
私は今日他の会社とのネゴシエーションが上手くいかなくて疲れてしまって。
それでつい感情をあらわにしてしまったの」と。

「そうだったんだね」革パンツの彼はいつになく親切です。
「なんていう会社なの?何か助言ができるかも」黄色の彼も神妙な顔をしてテーブルにつきます。

(恋人の前ではよい人に見せたいのだろうか・・・)と思いつつ、
私はキャンドル会社のカタログを広げました。

「私はこのキャンドルが、あなたたちのカードと同じくらい
私の顧客にぴったりだと思うの。
でもこの会社が直販できるのは、南北のアメリカのみ。
それ以外の地域の会社は皆、イギリスの代理店を通せとセールスマネージャーは言うの。
そんなことをしたら、輸送コストが高くなってしまうし、エコじゃない。
でも私はさっき偶然ブースにやってきたCEOを捕まえて、明日15分時間をもらうことができたの。
明日、何から話してどう交渉すればよいのか分からなくて」
と説明すると、2人は難しそうな顔をしています。

革パンツの彼が口をひらきました。
「それは難しいね。アメリカでは契約が全てなんだ。
多分その会社とイギリスの代理店は特別な契約を交わしているのだろう。
それを覆すのは難しいと思うよ」

そう、私もそう思っていました。私は今まで米系IT企業で働いていたので
契約の重要性は理解しています。
私は、彼に単なる素人ではないことも分かってもらいたくて説明を続けます。
「そうよね。私はアメリカの会社で働いていたからよく分かる。
でも、CEOの時間をもらえるなんてとても貴重なチャンス。
私はどうすればよいのだろうと途方に暮れていたの」
私の説明に、革パンツの彼がうなずきます。
「Take your way(あなたのやり方で) それしかないよ」

カタログを興味深く見ていた黄色の彼が口を挟みました。
「でも僕には一つ分かることがある。このCEOの彼はゲイだよ。
間違いない」

えっ?!

革パンツの彼もカタログを覗きこんでこう言います。
「どれどれ。ああ、そうだね。間違いない」

私にはまったく分からないけれど、そうなんだ。
・・・それは貴重な情報をありがとう。


廊下の電気が暗くなりました。今日ももう閉館時間です。

儀礼的に私をもう一度食事に誘う彼らの申し出を断って、
私たちは別れることにしました。

彼らは楽しげに身支度を行います。この2人はやっぱり恋人同士なのかなぁ…。
革パンツの彼が振り返って、私にもう一度言いました。
「Take your way!」

ありがとう。

私はホテルに戻って作戦を練ることにしました。

つづきはこちら


アンナ・グリフィンのカード売り場@碧香堂はこちらです

2014年4月4日金曜日

ANNA GRIFFINのカード(1)出会い

碧香堂からANNA GRIFFINのカードをお届けできることになりました。
碧香堂 ANNA GRIFFIN

※画像をクリックすると売り場に移動します。


日本ではテキスタイルブランドとして知られるANNA GRIFFIN(アンナ・グリフィン)。
布好きな方なら一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?

実はANNA GRIFFINは「パーティーの招待状」の販売からスタートした会社です。

私は2年前のアトランタの見本市でこのカードを発見するまで、
ANNA GRIFFIをファブリックメーカーと認識していました。

アトランタの卸売ビルをぐるぐる回っていたその日。
私は偶然ANNA GRIFFINのブースを発見しました。

当時はキャンドルメーカーとの商談に集中して日々過ごしていたのですが、
その日は、予定を全て達成しており、少しだけ気持ちに余裕がありました。
ショーウインドウには赤い花柄のバッグが飾られています。

「あ、すっごくかわいいバッグ!ANNA GRIFFINのブースなんだ。
今日はよく頑張ったから、ちょっとくらいキャンドル以外の商品も見てもいいよね?!」
と、私は浮わついた気持ちでブース入りしました。

「ハーイ、ようこそ私たちのブースへ!」
フレンドリーでノリのよいスタッフさん達が迎えてくれます。

その日までの商談で「アメリカではフレンドリーなノリが大切」と学んでいましたが、
こんなに陽気に歓迎してくださったのは初めてです。

とってもスタイルのよい女性2人に左右から
「あなた、このバッグが気に入ったのでしょう?」
「あら、こっちのブルーのポーチじゃないの?」
矢継ぎ早にまくしたてられ、すっかり女子気分に。
ここでは無邪気に振る舞った方がよさそうです。

「両方よ!私はブルーが好きなのだけれど、この赤いバッグも素敵!」
「でしょう?これ、新製品なのよ!」
とノリノリで会話をしていると、
通路からは見えなかった場所にカードが展示してあることに気が付きました。

私は、会話を中断してこのカードに引き寄せられました。
黒と白だけなのに、すごくエレガントです。
お悔やみの挨拶にこんなカードをいただいたら嬉しいに違いありません。

しかし、こんな有名ブランドが私を相手にしてくれるでしょうか?

私はその日も様々なメーカーに
「既に日本に代理店がある。カメヤ〇って知っているか?」とか
「うちは〇紅商事が代理店だ。そこを通してくれ」とか
「〇フト以外の日本人には売れないんだ」等
誰もが知っている日本企業の名前をあげられ取引を断られていました。

「すごく素敵なカードね。このカードは日本に輸入できるのかしら?」
と尋ねたところ、
「あら、あなた日本人だったの?!見っえな~い」
「私達じゃ答えられないわ。彼女を呼びしかないわね」
「ちょっと待っててね」
とスタッフの女性がバックヤードに引っ込み、奥にいた女性を呼びに行きました。

マネージャーらしき女性がやってきて、私を一瞥します。

わ、スタッフさんと雰囲気違いすぎ。
なんだか手ごわそう・・・

今まで相手をしてくれていた彼女たちの表情からも、
丁寧に接する必要がある人物であることが分かります。

私は緊張する気持ちを抑え込み、頑張って笑顔をキープしながら
モードを切り替え、精一杯丁寧な言葉づかいで説明しました。

「初めまして。私は日本から来ました。
とてもきれいなカードなので、私はこのカードを日本で
私の顧客に届けたいのですが」と。

するとその女性は強面のまま、
「カードならOKよ。でも、バッグはダメ」
と命令調で教えてくれました。

は、ありがとうございます。
奥で見守るスタッフさん達もほっとした様子です。

ひそかに彼女たちとアイコンタクトをする私を気にせず、
マネージャー女性は続けます。
「あなた、いい目をしているわね。
ファブリック(布製品)とステーショナリ(文房具)は
既に日本の会社と取引があるけど、カードは扱ってくれないのよ。
うちはあなたの指差したこのカードのシリーズから始まった会社なの。
日本ではカードをあまり使わないらしいのだけれど、大丈夫なの?」

私がたまたま指差したカードが彼女のお気に召したようです。
なんだか幸運。

私は念のため「喪のギフト」として提案販売するつもりであることを
話しておくことにしました。

私は緊張しながら一生懸命説明しました。
「私はグリーフケアのためのギフトを販売しています。
日本にはシンパシーカードという習慣がないのですが、
日本にもシンパシーカードを広めたいと思っています。
貴社のこのカードはパーティーの招待状かもしれませんが、
色合いがシックで、日本の喪のシーンにも合っています。
これらのカードをシンパシーカードとして販売してもよいでしょうか?
私はANNA GRIFFINがブランドイメージを大切にする会社だと知っているので、
少し心配です。」

すると、強面のマネージャーはニヤッと微笑み
「それはユニークなアイデアね。問題ないですよ」
との許可してくれました。


これが私とANNA GRIFFINのカードとの出会いです。


それにしても、「グリーフケア」という単語がすんなりと
通じることに驚きました。
本当にアメリカでは「グリーフケア」は浸透しているのだなぁと思います。


「では、取引条件を聞きましょう」となったのですが、
一筋縄では行きません。


取引成立までのお話は次の記事でお届けします。


アンナ・グリフィンのカード売り場@碧香堂はこちら