2013年11月20日水曜日

お花のろうそく(4)-アメリカでの修行

こうして私は、晴れてアメリカでの見本市に参加できることになりました。

会場はアトランタのアメリカズマーケット。
3ブロックにわたってビルが建っており、その中に5000店もの販売代理店が入っています。

バンコクでの反省を踏まえて、与えられた3日間では十分に会場を回ることができないと判断。
前後に自腹でホテルを取り、1週間滞在することに決めました。

アトランタは、バンコクと違って初めての土地で緊張します。

英語も早くて聞き取るのが大変です。
初日に警備員に呼び止められたと思って慌てて書類を出したら、
ぷっと笑われてしまいました。
「僕はただHelloとあいさつしただけだよ。登録はあっち」
とのこと。

うれしいのは、海外からのバイヤーのためのラウンジが使えることでした。
会場の一角のホテルのようなラウンジにコーヒーや軽食が用意されていて、Wi-fiも無料。
パソコンやプリンターも使うことができます。

バンコクとの待遇の違いに感激していたらミプロの方に
「どこの展示会でも海外バイヤーのためのラウンジはありますよ。
バンコクでも使えたはずです」と笑われてしまいました。

私は1週間毎日このビルに通いました。
日没後は治安がよくないと聞いていたので、朝1番に会場入り。
分厚いカタログから「Made in USA」のキャンドルメーカーをピックアップし、
タイムリミットの午後5時まで、片っ端からブースを訪れました。

中には、あのタイのお花のろうそくメーカーの商品を扱っている会社もありました。
こんな遠くのアメリカまで流通しているとは…。

いくつかの失敗をしでかしながら、私は貿易アドバイザーさんと
親切なブースのスタッフさん達から
「細かい条件は、帰国後メールでつめる」
「現地で確認すべきは、商品の詳細」
「取引相手に自分を印象付けて信頼関係をつなぐ」
ことの大切さを学びました。

7日間の期間中には、いろいろな出来事がありました。

大きなメーカーのCEOさんとの会談を偶然ゲットできてしまい、
あわてて徹夜で資料をつくったり、
商談相手のメーカーの男性に突然食事に誘われて困惑していたら
「心配するな、俺たちはゲイだ」と言われ、さらに困惑したり。

毎日通うバイヤーは少ないらしく、期日の後半になると、
ラウンジ担当の女性や入り口の警備員にも顔を覚えられてしまいました。
それどころか、道に迷っている他のバイヤーにフロア案内ができるまでに。

最後から2日目の午後、私はほぼすべてのブースを回り終えました。
そこで初日に「日本に輸出できるかどうか分からないわ」と言われてあきらめていた
ブースに再度出向き、再度交渉しました。
ブースの担当女性は、困ったような笑顔をうかべ
「日本に輸出できるかどうか分からないの」と再度私をやんわりと拒絶します。
でも私は負けません。
「ええ、分かってる。
でもせっかく日本から来たのだから香りをテストさせて。
私、このアロマキャンドルがこのビルの中で一番気に入ったの。
コーヒー豆はあるかしら?」
とあくまでフレンドリーかつ強引にテスティングを開始。
鼻のリフレッシュに使うコーヒー豆を片手に全30種類の香りを全て
メモを取りながら確認しました。

そんな私を見ながら、担当の女性と隣のブースの男性が
「彼女は初日には簡単に追い返されていたのに、
今日は食い下がってテスティングまでしている」
「サンプルまでゲットしたのよ。コーヒー豆も要求された」
「日本人には珍しい積極性だね。彼女はよいバイヤーになるよ」
「そうね。きっと」
と話しているのが聞こえた時には、してやったりと思いました。

(実は、このメーカーは既に日本の大手商社と取引をしていたので
私のこの行為は全くの無駄だったのですが。)

最終日に気分よく歩いていると、警備員の男性に呼び止められました。
初日に英語が聞き取れなかった私を笑った男性です。

「君は毎日朝早くから来てよく歩いたね。
初日は僕の挨拶も分からずに困っていたけれど、いろんな友達もできたみたいだ。
君のビジネスはきっと成功するよ。来年もまた来てね」
と微笑む彼。

その笑顔を見た時、私はバイヤーとして少しだけ成長できた気がしました。

こうして私は、アメリカ南部のホスピタリティーに心を温められ、
私はアトランタを後にしました。

タイからろうそくを持ち帰り、
300円の消費税を支払っていたので参加できたこの見本市。

「とてもたくさんの偶然と親切に助けられた。
きっと私はこの事業をやるべきなんだ。
どうすればいいのか、今は全く分からないけれど」
と思いながら。

最終日にかろうじて撮影したビルの外観の一部。
会場内は全て撮影禁止です。



次の記事へ続きます。

0 件のコメント:

コメントを投稿