2013年11月20日水曜日

お花のろうそく(5)-初の取引

アメリカから別のろうそくを少しだけ輸入してみた私ですが、
やはり、タイのあのお花のろうそくのことが忘れられません。

しかしメールの返事ももらえないのではどうしようもありません。
お花のろうそくのことは一旦諦め、
お線香だけでもこの事業をやってみよう、と様々な準備を進めました。

幸運にも、2012年6月に中小庁の創業助成金をいただけることになり、
2013年7月にネットショップ碧香堂をオープン。

前回バンコクから持ち帰ったろうそくを大切に使いながら、
商品展開を行いました。

お線香も、素敵な色と香りで好評なのですが、
やはりこのお花のろうそくは人の目を惹きつけます。

試しにアウトレット商品として1箱だけ出品してみたところ、
あっという間に売れてしまいました。

やはりもう一度あの会社との取引にトライしたい。
そんな思いが募り、9月に東京ギフトショーへ参加するために上京した際、
ミプロに相談に行きました。
相談相手はもちろん、アトランタでもお世話になった貿易アドバイザーさんです。

「実は、注文は最低5000USDからだと言っているタイの会社に、
まずは500USDから取引させてくれないかと打診したいのですが」
と相談したところ、
「うーん。それはもう、当たって砕けるしかないね」
とのこと。

そして無理してでも1000USDは出すべきなのかと悩む私に
「創業間もない時期に資金面で無理をするのは決してだめだ」
と諭してくださいました。
「でも、大丈夫。あなたはアトランタで交渉のコツをつかんだと思うよ。
事前に『また行くよ、よろしく』とだけメールを出しなさい」
とアドバイスをいただきました。

半信半疑でメールを出してみたところ、なんとすぐにお返事が。
そこには「わざわざ知らせてくれてありがとう。
初日に来てくれれば、サンプルを上げれるよ」
と書いてありました。

そこで「最新のカタログを送ってください。事前に注文を吟味したいので」
とメールを打ち、私はタイへと旅立ちました。

今回は「タイ王国貿易センター」を通じて登録したせいか、
スムーズに入場できました。

それどころか、ランチクーポンまで付いてきて、ゴージャスなお昼をいただくこともできました。
バイヤー用ラウンジも使えます。
もうフードコートでノートを広げる必要もありません!

私は意気揚々とブースに乗り込み、まずはサンプルの交渉です。

最初は「やあ、ようこそ。気に入った商品の写真を撮ってください」としか言われませんでしたが、
さりげなく「メールをありがとう。初日に来ればサンプルをくださる
とおっしゃったので初日に来ました。サンプルを選んでよいですか?」とアピール。

「ああ、どうぞ」とのこと言われたので、私はさっそくサンプルを選び始めました。

彼のろうそくはますます美しくなり、パッケージも改良されていました。

やっぱり素敵!
このろうそくを、絶対に手に入れたい。

夢中でサンプルを選んでいると、彼の顔が曇っていることに気が付きました。
あれ、ひょっとして私はサンプルを選びすぎ?

ふとブースを見渡すと、バックヤードに、他のバイヤー用でしょうか。
それぞれポストイットをつけた商品が1袋づつ積まれていました。

やっぱり1人1つぐらいが相場なんだ。しまった。

そこで私は内心慌てながら言いました。
「ほんの少しの注文だったら、私のバンコク滞在中にこのろうそくを
受け取ることができますか?もちろんお金は払います」と。

しばらく考えて彼は言いました。
「そういえば、お前は3年前にもやってきたな。よし、いいだろう。商品を選べ」

やった!交渉成立です。

しかし問題が生じました。

代金総額の30%のデポジットをその場で支払わないといけないのですが、
その時私は十分なタイバーツを持っていませんでした。
昨年まで会場にあったはずの銀行は姿を消しており、両替をするなら
タクシーで最寄りの駅まで行かないといけないそうではありませんか。

ブースに戻って相談すると、
「いいよ、今日中にATMから払い込んでくれ、そしてそのレシートをSMSで送ってくれ。
3年待ったんだ。1日くらい待てない訳がない」と言われました。

3年前の私を覚えてくれていたのはうれしいけれど、メールを無視したのはそっちじゃ?!
ていうかATMからの振込ってどうやるの?!と思いながら、
私は笑顔で感謝を伝えて会場を後にしました。

タイ在住の友人の助けを借りて、なんとか払い込みを終え、
翌日注文書のコピーをもらおうと再度ブースに出向いたところトラブル発生。

「お前の注文書は既に工場に送ってしまった。コピーは渡せない」
と言うではありませんか。
彼は引き渡しの日に来れないと言っていたので、
注文書のコピーがないと、いざという時に私は困ってしまいます。
なだめすかして、彼のスタッフにもう一度注文書を書いてもらっていると、
彼は明らかにイライラしてきてしまいました。

展示会期間中の時間はとても貴重。
出展者の方は少しでも多くのバイヤーと会話をしたいはずです。
しかし、日本人の私としては、ドキュメントがなければいざという時に
誰にも申し開きをすることができず困ってしまいます。

なんとか注文書のコピーを手にした私ですが、
途中で彼からかなり強い言葉も投げかけられてしまいました。
彼は「はやりこんな小口取引をするんじゃなかった」と
後悔しているのかもしれません。私はすっかり凹んでしまいました。

そんな私は、翌日お線香の会社の工場見学に出かけました。
工場見学の最後に、お線香会社の担当者が口を開きました。
「昨日、あなたのキャンドルメーカーのオーナーが私たちのブースに来た」
と。びっくりする私をしり目に、彼女は理路整然と話し始めました。
「彼は、あなたが小さい取引なのに多くの条件を言うのでイライラしてしまった、
と言っていた。
彼は既に大きな顧客を持っており、通常もっと大きな金額でしか取引しない。
しかし、彼はあなたの創業を手伝いたいと言っていた。
彼を信じてもよいと思う」と。

私のお線香の会社と、彼のろうそくの会社のブースはすぐ近くに並んでいました。
私はろうそくのピックアップの日を決める際に
「この日は、あのお線香会社の工場に見学に行くのでどうしても来れない」と断っていたのです。

彼はそれを覚えていて、私が去った後、
お線香会社のブースに足を運んでくれたのでしょう。
彼のその行為にも、それを私に伝えてくれるお線香会社の彼女にも
私は心を打たれました。


正直、本当にろうそくを引き渡してもらえるのか不安になっていた私ですが、
彼女のこの報告のおかげで、
「そうだ、あんなきれいなキャンドルを作る人が不正をする訳がない」
と気持ちを取り戻すことがでいました。

ろうそくの引き渡しの日、恐る恐るブースを訪れると、
なんと彼の姿がありました。

用意されていたろうそくは注文通りでパッキングも完ぺき。

私は彼に「私は以前アメリカからろうそくを輸入したのだが、
パッキングが不十分で痛い目にあった。
でもあなたのパッキングは完璧だ」と伝えました。
「どうだ、俺のろうそくが一番だろう」と得意げな彼。

私は次回は規定通りの金額で注文することを約束して会場を後にしました。

こうして、私とお花のろうそくメーカーの初の商取引が完了しました。
私があのお花のろうそくと出会ってから、実に3年の月日が流れていました。

タクシー売り場で積み上げられる、私の荷物。
こんなに大きな荷姿になってしまいました。


創業物語・お花のろうそく編はこれにて完了。
こうして、皆様にお届けできるようになったお花のろうそくがこちらです。

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