2014年9月30日火曜日

ANNA GRIFFINのカード(8)商談

お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その6です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー
ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ
ANNA GRIFFINのカード(5)エレベータースピーチ2
ANNA GRIFFINのカード(6)作戦会議
ANNA GRIFFINのカード(7)英語プレゼン準備

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

ミプロのミーティングが始まりました。
ミプロはの正式名称は一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会。
小口輸入をサポートする公的な組織です。

ミプロは、商売をされている法人を対象に海外の見本市へのツアーを開催しています。
職員の方に「個人の参加は難しいのでしょうか」と相談したところ
「過去には個人でも参加した方がいるので、申し込んでみては?」と言われ、
私は様々な書類を作成し、参加権をゲットしたのでした。

【参考】ミプロHP:http://www.mipro.or.jp
※このツアーは例年行われる予定です。詳細発表は11月頃の様子。


ツアーは現地集合・現地解散ですが、
見本市主催団体から、隣接するホテルに3泊分の無料宿泊のプレゼントがあります。
そして、ミプロの貿易アドバイザーさんが商談に同行してくださるという、初心者に嬉しい特権があります。

超初心者の私は、バンコクでの見本市での経験から、
3日間では商品を見極めを行うことができないと判断し。
個人的にツアー開催の5日も前から会場入りしてこの日に備えてきました。

ミーティングは、代表のあいさつと注意事項・商談の進め方と参加者の自己紹介が主なアジェンダでした。
参加者は1人あたり2回、貿易アドバイザーさんの商談同行サービスが利用できると説明がありました。
既に商談希望日時が決まっている私は、早速「今日の午前と午後2時」のアテンドを予約しました。
明日はもう同行してもらえなくてもいい!と割り切ります。

午前中は、もう1つ気になっている商品がある会社との商談に宛て、例のキャンドルメーカーを下見。
そして約束の午後2時。

私は、お昼ごはんもバイヤーラウンジで振る舞われる軽食で済ませ、
ぎりぎりまで修正したプレゼン書類を持って、あのキャンドル会社のブースへ向かいました。
緊張しますが、経験豊富な貿易アドバイザーさんが一緒なので心強いです。

既に、ブースのテーブルには、昨日会ったイケメンオーナーとセールスマネージャーが着席していました。
書類を広げ、何やら数値を書き込みながら話し合っていました。忙しそうです。

先方2名・当方2名の合計4名で挨拶を交わしながら、
さっそく貿易アドバイザーさんが今回のミプロツアーについて説明してくださいました。

「我々は公益団体で、今回はアメリカ大使館商務部の招待でアトランタに来ている。
Ms.Katoは特別に審査を通過した有望な起業家である」とさりげなくPRしてくださいます。

最初に態度が変わったのはセールスマネージャーでした。
彼は、瞬時に貿易アドバイザーさんの英語力と経験値を見ぬき、私を無視して会話を始めます。
手短に、商品と会社の概要を説明し、すぐに取引条件に話題が移動します。

展開が早い。
これがプロ同士のスピードなのでしょう。

私は商談主として、ぼーっと成り行きを見守っている訳にいきません。
おいてきぼりをくらった格好のオーナーに、持参した資料をお見せします。

1枚目の資料のタイトルは「御社の物流の最適化を提案します」。

世界地図に、キャンドルメーカーの本社工場・アメリカ某州、イギリスの代理店の場所、そして私の名古屋をポイント。
それぞれのポイントの間を曲線でつなぎ、所用マイルが付け加えました。

ネットを使って、各ポイントの住所まで調べたので、おざなりな地図ではないことが分かります。
また、地図は日本式の太平洋を中心とした地図を選んだので、
アメリカ人にとっては普段とは異なる視点で世界を見ることになるよう工夫してあります。

貿易アドバイザーさんがセールスマネージャーに「彼女の為に、特別に直接取引してくれないか」と言ったところ、
セールスマネージャーが顔色を変えてまくしたてはじめました。
「既にある契約は変えられない。オーストラリアだって韓国だってイギリスの代理店を通じて取引してもらっている。
我々は南北アメリカ内の取引に集中することでグループの結束を図ることを優先しているのだ」
というようなことを話しています。

半分は聞き取れていないと思いますが「コントラクト(契約)は絶対だ」という単語は確かに聞き取れました。

まだ私が何も話していないのに、会話が白熱しすぎています。
当事者として介入のタイミングです。何か言わなくちゃ。

私は「ちょっとまってください」と言いかけましたが、英語を組み立てているうちに一瞬言葉が詰まりました。

その時、思わぬ援護者が現れました。

私の資料を意外な様子で見ていたオーナーが私の様子に気づき、沈黙を破って
「彼女の主張はちょっと違うみたいだよ」と声をかけてくれたのです。

セールスマネージャーと貿易マネージャーさんがはっと黙り、こちらに視線を送ります。
会話の主導権をつかむチャンスです。

私は資料をセールスマネージャーにも渡しながら、流れを離さないように話し続けます。
「私は商流でなく、物流についてお話をしたいです。
この地図のように、御社から日本へは直接輸送した方が効率がよいはずです。
既にある契約を変えることが難しいのは知っています。
私は13年間IBMで働いてきたので、アメリカ社会における契約の重要性を理解しています」

セールスマネージャーが「フン」と私を一瞥し何か言いかけたのを遮って、
オーナーがゆっくりと私に説明しました。

「あなたの言うことはもっともだが、実際に今我々が日本へ輸出するとなると、
輸用会社の契約により、サンフランシスコを通さなければならない。
本社工場のある州からサンフランシスコまでの距離と、
ロンドンへの距離はあまり変わらないのです」

は?サンフランシスコ??
いきなりサンフランシスコと言われても、ゴールデンゲートブリッジとナパバレーと、
チャイナタウンの飲茶しか思い浮かびません。

理解できない私を察知した貿易アドバイザーさんが、すかさずオーナーに聞き返します。
私にも分かるように簡単でゆっくりとした英語です。

「サンフランシスコですか。それは船便だからでしょうか?
なるほど。なるほど。ご契約されている運送会社との取り決めですね。

しかし契約を変えることは難しくても、彼女が主張する物流だけを変えるという提案は
考える余地があるのではないでしょうか。
あなた方も御存知の通り、商売を始めるというのは様々な困難があります。
ビジネスをはじめたばかりの人間にとって輸送コストは大きな問題です。
はるばる日本から来た彼女に、チャンスをあげてみませんか?」

オーナーは頬杖をついて何か考えているようでした。
セールスマネージャーは成り行きを見守っています。表情は相変わらず不服そうですが。

私も必死で言い添えます。
「韓国やオーストラリアの販売会社もそれを望んでいるのではないでしょうか。
我々のビジネスだけでなく、エコロジーのためにも」

実際には昨夜、一生懸命辞書をひきながら考えぬいたセリフですが、
当意即妙に受け答えしたように聞こえます。

「エコロジー?」とオーナーとマネージャーが聞き返します。
「エコロジカル、環境」貿易アドバイザーさんが補足し、
私はあわてて「グリーントレードだ。未来の為にも環境のことを考えないと」付け加えます。

「エコロジーか。なるほど」
オーナーが笑みをこぼしました。

あら、ちょっと付け焼刃がばれちゃったかしら。

場の空気がほころんだ直後、オーナーが笑顔のまま切り込んできました。

「2トン。

では、2トンでどうでしょうか。
2トン購入できるなら、あなたの提案を受け入れます」

オーナーは頬杖をついてあごのしたで手を組みじっと私を見つめています。
私の表情のどんな変化も見逃さないようにしているのでしょう。

しかし私は「2トン」という言葉を聞いた途端、途方にくれてしまいました。

2トン・・・・?
2トンてどれだけの量なんだろう。
重さは分かるけど、体積は?
あ、2トントラックくらいの大きさなのかな・・・?

私には、かろうじて状況を把握するだけの分別が残っていました。
表情を変えないよう、頑張って涼しいまま顔のまま「1分ください」と英語で言った後、

日本語に切り替えて貿易アドバイザーさんと内緒話です。

「2トンて一体いくらくらいなんでしょう」
「さあ。でも金額じゃなくてハンドリングの問題だよ。買っても売れないのでは?」
「資金はありますが、保管する場所がありません」
「最初の取引での無理は禁物です。冷静に」
「そうですよね」

そして改めて表情をつくり、オーナーに向かって言いました。
「私は、2トンは買えません。今は」
かろうじて「今は」を付け加えるのが、精一杯の虚勢です。

オーナーは微笑を残したまま眉の両端をわずかに下げ、残念そうに言いました。
「分かった。じゃあ仕方ない。
イギリスのリチャードと交渉してくれ」

セールスマネージャーはシニカルに笑いながらちゃっちゃと書類を片付け始めます。
「はい、終了!」とばかりに張り切って。


ちょっとまって!

私の本題が残っています。

私は「もうちょっとだけ待って」と言いながら、慌てて
1枚目の資料をめくって2枚目の資料を見せました。

2枚目の資料は「私をリチャードに推薦してください」というタイトルで、
「取引への想いと、連絡先」が書いてあります。

さっと目を通したオーナーがにやりと笑いました。
「こいつは最初からこれが目的だったのか」と理解したようです。
英語の資料を用意しておいてよかった。
口頭だと1分はかかるところを、資料を見せるだけなら数秒で済みます。

「OK,わかりました。
リチャードに連絡しておきましょう」


切り上げのタイミングです。

私は席を立ち、オーナーに握手を求めながら言いました。
「チャンスをくれてありがとうございます。
数年後には直接取引していただけるよう頑張ります」

貿易アドバイザーさんが付け加えます
「代理店の方に彼女が有望な起業家であることを言い添えてくださいね」
と。


私たちは握手をかわし、ブースを去りました。

広いアメリカズマートの中を歩いて、バイヤーズラウンジに戻ります。
貿易アドバイザーさんは、この後すぐに他の参加者の方の商談に同行される予定になっています。

ラウンジに戻った私は、改めて貿易アドバイザーさんにお礼を言い、
次の商談に向かう一団を見送りました。

私はドリンクコーナーにあったホットチョコレートで一息つくことにしました。
休憩コーナーのゴージャスなソファーに腰をおろし、ゆっくりと暖かいチョコレートドリンクを
口に含みます。

・・・・美味しい。

甘いカカオの香りが、私の高ぶった神経を和らげてくれました。

「とりあえず、今の自分にできることは全てやった」

そう思った瞬間、どっと疲れが押し寄せてきました。


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜


続きます。

写真はツアー最終日の記念撮影。
貿易アドバイザーさんとバイヤーズラウンジにて。

2014年9月25日木曜日

ANNA GRIFFINのカード(7)英語プレゼン準備

お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その5です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー
ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ
ANNA GRIFFINのカード(5)エレベータースピーチ2
ANNA GRIFFINのカード(6)作戦会議

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3時間だけ仮眠をとることに決めた私は、しっかり目覚ましをセットして眠りにつきました。
自分のiPhoneとホテルの部屋にある時計、そしてモーニングコールサービス。
時差を確認しながら慎重にアラームをセットしました。

言うべきことは決めました。
プレゼンテーションと交渉は元々得意です。
あとはお肌の調子を整え、元気はつらつと行けばOKでしょう。

連日の疲れもあってすぐに眠りに落ちたはすなのですが、
目覚ましが鳴る前にはっと目が覚めました。

「あれ、”輸入ルートを再考してほしい”って英語でどうやって言うんだろう?!」
そうです。私は日本語で話すべきことは決めていましたが、
それを英語でなんと表現するべきか調べていませんでした。

パジャマのまま、iPhoneの辞書アプリを片手に、分からない単語を調べながら
「英語で何というべきか」を書いていきます。
お部屋に備え付けてあった、ホテルの便せんの余白が少なくなってきてしまいました。

能率が悪いこと仕方ありません。
そしてやはやり口頭では効果的にPRできる自信がありません。
自分の得意分野を活かすという意味でも、プレゼン資料を作る必要があるでしょう。

インターナショナルバイヤーラウンジに行こうと思いました。
あそこには、パソコンとコピー機、そして簡単な文房具が用意してあり、
各国のバイヤーが自由に使えるようになっています。
そして朝ごはんのサービスもあります。

空腹できりきりと胃が痛みだしました。
私は日本から持ってきた梅のど飴でごまかしながら、
「ラウンジが開くと同時に飛び込んで、プレゼン資料を作ろう。
そして朝ごはんもあそこでいただこう」
私はそう心に決めました。


朝8時45分。ラウンジの前で待っている私を見つけて担当者が驚きます。

”グッドモーニング。今日はまた早いのね!”
”おはよう。ラウンジのパソコンを使って書類をつくりたいの”
”いいけど、ここのパソコンでは日本語が使えないわよ”

思った通り、ここのパソコンには英語環境しかないようです。
しかし私は腐っても元SE(システムズエンジニア)。
英語Windowsは何度も使ったことがあります。

幸いMS-Officeが入っていました。
私はコーヒーと謎のホットサンドの朝食を食べながら、
3枚のプレゼン資料を作りました。


1枚目は表紙とアジェンダ。私の連絡先もさりげなく記します。


そして、2枚目には輸入ルートの件。
物流の最適化(optimization)というタイトルです。

私は、卸売・小売り業界の言葉はよく知らないのですが、
optimizerはIT用語として知っていました。
データベースのアクセス最適化を行う機能をoptimizerと呼ぶのです。

商流(契約の流れ)は変えられなくても、物流(モノの流れ)は変えれるし、
そうした方があなたの会社の為であると書きました。

アメリカから直接日本まで運んだ場合と、アメリカからイギリスを経由して日本まで運んだ場合のマイルを調べ、具体的な数値で記しました。

英語環境のパソコンでは検索が困難です。
iPhoneでJTBのサイトにアクセスし、飛行機ルートを検索することでマイル数を調べました。


3枚目には「私をイギリスの代理店のD氏に推薦してくれ」と書きました。

ミーティングの結論であり目的です。
細かい条件をとやかく話し合うことになっても、私は対応できません。
私のビジネスの準備状況と、貴重な「オーナーとの直接対談」の機会を得た
というアンバランスな2つの状況を考えて、この結論が最適だと判断しました。
この申し出にYesと言ってもらうことが本日のアポイントの目標です。


必死で書類を作っていて、ふと気が付くと、ラウンジに日本人が大勢いました。

そろそろミプロ御一行様の集合時間です。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜


ANNA GRIFFINのカード(8)商談へ続きます。

ホテルのお部屋。
この机で一生懸命資料を作りました。

2014年9月18日木曜日

ANNA GRIFFINのカード(6)作戦会議

お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その4です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー
ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ
ANNA GRIFFINのカード(5)エレベータースピーチ2

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

Bobのブースを後にした私は、カード会社のブースに立ち寄り
会場近くのコンビニエンスストアでバナナと野菜ジュースを買ってホテルに戻りました。

まずはシャワーを浴びて心を落ち着けた後、明日の午後2時までの作戦を練りました。

時刻は夜の9時。
明日は、朝10時に外国人バイヤー向けのサロンに集合し、ミプロの買い付けツアーのミーティングがあります。
タイムリミットまであと11時間。
今夜は多少睡眠不足になっても、明日の商談に向けて全力でシナリオを練るべきでしょう。

私はまず、いただいたカタログを読み込んで商談相手の会社について知ることにしました。
カード会社の男性スタッフとその恋人(?)の男性から
「このオーナーはゲイに違いない」という通常では得難い情報を得た私ですが、
英語の読解力はイマイチ。
「パソコンを持ってきていれば、翻訳ソフトが使えたのに」と後悔しながら、
iPhoneの辞書を片手に分厚いカタログを読んでいきます。

分厚いカタログに目を通し終えた時、時刻は夜の11時半になっていました。
学生時代、リーダーの授業をさぼっていた自分を呪います。

カタログを読んだ結果、
・どうやらこの会社は現オーナーが一人で作り上げたも同然らしい。
・販売店やパートナー企業への気配りを欠かさない。
・重厚な表現を好み、伝統ある企業のように振る舞うことを好む。
という傾向が分かりました。

空腹を覚えた私は、日本から持ってきた非常食とバナナと野菜ジュースで夕食を取りながら考えました。

このような傾向を持つ企業が、私のような起業前の個人と取引をしてくださるとは思えません。

今の私が仕入れに出せる金額は、最大で100万円。
しかし、いきなり1企業との取引に全額をつぎ込むのは危険です。

それに、そもそも仕入れたとしても、そのキャンドルをどこに保管するのか?!

いただいたサンプルを元に、10万円分購入した場合の容量を計算してみましたが、現在の自宅ではとても保管できません。
実家に泣き付けばなんとかなるかもしれませんが、保管状態が心配になります。
そして何より、私はそれだけの量のキャンドルを売りさばく自信がありません。

コーヒーメーカーでお湯を沸かし、ハーブティーで心を落ち着けます。

この会社の「ストーリーを持ったキャンドル」は私のグリーフケア事業にぴったりで魅力的ですが、
自分のこのような準備状態で、明日具体的な金額の話をするのは得策ではないでしょう。
断られておしまいです。

ううーむ。

私はデスクを離れてベッドに横になりました。
天井を見ながら考えます。

せっかくオーナーとの直接対談という貴重な機会を得たのです。
取引を成立させるのは無理だとしても、何か印象は残したい。

バイヤーとしては未熟なのですから、自分の得意分野で潜在能力をアピールするしかありません。

私の脳裏に浮かんだのは、かつて所属していた会社の営業さん達の姿でした。

そうだ、プレゼンをしよう。

日本人バイヤーから見た取引条件の問題点を指摘し、相手に対して有益情報を与えよう。
明日は、取引相手として切り捨てられないことを目標にしよう。

そう決めました。

ベッドから起き上がった私は、主張したいことを箇条書きにしてリストアップしました。
ノートも持ってこなかったので、ホテルの部屋に置いてあった便箋といらなくなったリーフレットの裏を使って考えをまとめました。

与えられた時間は20分。
ところどころ通訳を頼まざるを得ない状況を考えると
言いたいことは2つ程度にに絞るべきでしょう。

考え抜いた結果、この2つをキーメッセージにすることにしました。
・アメリカからイギリスを経由して日本に輸入するのは効率が悪い。
・英国代理店の代表に私を推薦してくれ。


ここまで決めたら、時刻はもう午前2時。
睡魔が襲ってきたので、私は3時間だけ仮眠を取ることにしました。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

ANNA GRIFFINのカード(7)英語プレゼン準備へ続きます。

2014年9月11日木曜日

ANNA GRIFFINのカード(5)エレベータースピーチ2

久しぶりになってしまいましたが、創業物語の続きです。
お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その3です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー
ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

オーナーはまだあどけなさの抜けない顔をしていて、
でも目だけは冷静に私を見ています。

与えられた、というよりもぎ取った時間は1分。
この時間で、商談の交渉をすることはできません。
印象を残して「こいつの話を聞いてみよう」と思わせることが私の目標です。

アメリカ人から見ると、日本人は若く見えると言います。
彼はきっと私を同世代の女性だと思っていることでしょう。

私は、この自分のギャップと過去のキャリアを使うことにしました。

”私は日本から来ました。昨年起業したばかりです。
私は2年前までIBMでシステムエンジニアとして働いていました。
息子を小児がんで亡くしました。そして、喪のギフトを改革したいと考えています。”

ここまで話すと、彼はびっくりして
Oh that's too bad. I'm sorry to hear that.
と言いました。私は構わず続けます。
だって私には1分間しか時間がないのです。

”日本では、毎日仏壇に線香とろうそくを供える習慣があり、
遺族にお線香を贈る伝統的な習慣があります。

しかしこれは現在のライフスタイルにマッチしていない。
私はグリーフケアができる遺族の個性にあったギフトを
あなたのろうそくは、日本人の好みに合っていて
モダンで、香りにストーリーがあります。

私は息子を亡くした時、あなたのろうそくをギフトとして受け取りたかった。
だから私は日本にあなたのろうそくを輸入したいのです。

しかし、いくつか困難があると聞かされました。
詳しくお話をする時間をいただけないでしょうか。”

言いたいことはたくさんありますが、そろそろ1分のはずです。
自分のビジネス能力をプレゼンテーションするという意味でもそろそろ切り上げなければなりません。

彼は時計を見ながら言いました。
「申し訳ないけれど、今日はこれからディナーの約束がある。
明日の午後にしてもらえないだろうか」

明日。明日なら、日本からミプロの貿易アドバイザーさんがやってきて
午後には商談のサポートをしてくださるはずです。

「ありがとうございます。明日の午後2時はいかがでしょうか」
「いいですよ。では明日の午後2時に」
「お時間くださってありがとうございます」
私たちは再び握手をして別れることになりました。

忙しそうに去っていく彼を見送りながら、私はしばし呆然としてしまいました。

そんな私を我に戻したのは、タンパから来ている彼です。
どんっと私の肩をたたきました。
「やったな。お前、すごいな!!」
百戦錬磨のように見えた彼も興奮しているようで、言葉遣いが乱れています。

「私、アポイントをとったよね」
「ああ、明日午後2時だと確かに約束したぞ。
明日俺はいないが大丈夫か?」
「うん、明日なら私の輸入アドバイザーが日本から来てくれるの」

いつのまにか騒ぎを聞きつけてブース中のスタッフが集まってきます。
最低注文金額に悩んでいた素人くさい日本人バイヤーが
大メーカーのオーナーとの約束を取り付けたのです。

とっくに帰ったと思われたおじいちゃんスタッフまでやってきて私に聞きます。
「おまえさん、いったい年はいくつなんだ」
「38歳よ」私が胸をはって答えると、スタッフ全員でコントのように
「なんだってぇーー?!」とのけぞってくださいました。

私はパンフレットやサンプルを沢山いただいて、Bobのブースを後にしました。

最後にBobが声をかけてくれました。
「交渉は難しいと思うが、きみは大きなチャンスを手にした」
「ありがとう。また明日」

難しいのは重々承知。
「これでジ・エンド」と思われた可能性が復活したのです。
私の一世一代のエレベータースピーチは成功したと言ってもよいでしょう。

すぐにホテルに戻って明日の作戦を練りたいところですが、私には行くべきところがありました。
グリーティングカードの会社のブースです。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜


ANNA GRIFFINのカード(6)作戦会議へ続きます。


※時系列的には「ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください」の後半部分へ移動します。

2014年9月9日火曜日

東京ギフトショー

第78回東京インターナショナルギフトショーに行ってきました。

私が東京ギフトショーに初めて参加したのは2013年の2月。
以来、年に2回の開催にもれなく参加しつづけ、今回で4回目の参加となりました。

前回入手できなかった、数量限定で無料配布される「バイヤーズガイド」も無事ゲット。

今回は数時間しか滞在できなかったので、お目当てのセクションをピンポイントで回りました。

海外、それもアジアからの参加者が増えた!というのが第一印象。
東京ギフトショーもいずれはパリのメゾン・エ・オブジェのようになっていく予感がします。

そして実店舗のないネットonlyショップにも取引を許してくださる企業が増えてきたのを体感。

そして「あれ、あの企業さんは今回参加していないんだ」と意外に思うことが多々ありました。

大企業といえども毎回出展される訳ではないのでしょうし、
常連だった企業様も方針変換などで出展を取りやめることもあるのでしょう。

見本市は本当に一期一会なのだと感じ、改めて今までの数々の出会いに感謝しました。

2014年9月2日火曜日

シンパシーカード(英国)文言

先週に引き続き、英国のカードについての報告です。

義理の姉がロンドンで買ってきてくださったシンパシーカードは全部で10種類。

「ジョンルイス」というデパートのカード売り場で見つけたそうです。

ほぼすべてのカードの中身は白紙。
下段の2つのみ、カードの内側に「Thinking of you」と書いてありました。

写真では分かりにくいので、カードの表に書いてある文言をタイプしました。
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■下段左から
WITH SYMPATHY
WITH DEEPEST SYMPATHY

■下から2段目・左から
with you every step of the way(WWFへの寄付付き)
SYMPATHY(スズランの写真)

■中央(木漏れ日の森の写真)
ONE DAY AT A TIME
AND YOU WILL
FIND YOUR WAY

■上段左からアーチ状に
thinking of you (ティーカップに花束)
TEA and SYMPATHY (ピンクのティーポット:右下のカードに thinking of you X)
you're in my thoughts
with SYMPATHY
big hug x
------------------------------------------------------
xはキスを意味するそうです。

sympathyは同情・共感・思いやりのような意味。
Thinking of you は「あなたのことを想っています」という意味です。


個人的には、日本の慣用句「お悔やみ申し上げます」よりも
英国の「あなたのことを想っています」の方が
より遺族の気持ちに沿っているように感じて、好ましく感じます。

死別は悔やむべきものではなく、避けがたいこと。
死別に苦しむ方を思いやる気持ちを表すことは、
きっとご遺族の悲痛な気持ちを和らげてくれるのではないかと思います。


こういう言葉に囲まれて育った英国人によっては
「ありふれた言葉ばかり!」と感じてしまうのかもしれませんが。


将来、碧香堂のオリジナルシンパシーカードを作る際の
参考にしたいと思います。


※英国のシンパシーカードの習慣についてはこちらの記事をご覧ください。