2014年2月15日土曜日

グリーンティー・フレグランス問題

フランスは香り大国。
香水の作り手は大半がフランス人で、
世界各国の調香師さんもフランスで修業をすることが多いのだとか。

碧香堂のお線香はタイ製ですが、香料はフランス産のものを使っています。
メーカーの方によると「香料はフランス産のものが最も高品質で安定している」
とのことでした。

私は、碧香堂のお線香の全ての香りが好きなのですが、
唯一、ネーミング的に「あれ?」と不思議に思うのが「グリーンティー」。
日本人がイメージする「緑茶」とはかけ離れたイメージの香りで、
香水で「グリーンティーノート」として売られている香りに似ています。

以前、お茶の香りを研究されている京都大学名誉教授の坂田完三先生と
お話する機会があり、
・エリザベスアーデンの香水「グリーンティー」
・ロクシタンの香水「グリーンティー」
・碧香堂のお線香「グリーンティー」
の3つの香りをかいでいただいたことがあります。

その結果、このようなコメントをいただきました。
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・私にとってはいずれからも緑茶をイメージする香りを嗅ぎ分けることはできませんでした。
・興味深いことに私にとってはいずれも大変共通性のある香りでした。
・さわやかさに通じるような酸味を感じさせる鋭い香りを感じますが、
 私には伽羅木の香りもイメージされました。
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ざまざまなお茶の香りをご存知の専門家でも「香水のグリーンティーは緑茶のイメージと違う」と思われるのです。


香り大国のフランスで「グリーンティー」とされる香りの正体は一体何なのか。
先月渡仏した際に、ささやかな調査を行ってきました。


まず、協力をいただいたのは22歳のフランス人女性。
アロマキャンドルを愛用し、キャンドル会社で働いた経験もある方です。

ロクシタンの香水「グリーンティー」をかいでもらい
「これってグリーンティーの香りだと思う?」と聞いたところ。
「うん、間違いなくグリーンティーの香り。」とのこと。

うーむ。
と、そこでふと思い出したのが、空港で飲んだグリーンティー。
なんだか日本の緑茶とは異なるフレーバーがついていたのです。
 
 (爽やかな香りのするグリーンティー@シャルルドゴール空港)

そこで彼女に
「ところで、緑茶って飲んだことある?」と聞いたら
「実は全くない。でもこの香りはグリーンティーのイメージで間違いない。」
ときっぱり断言。

どうやらフランス人にとって「グリーンティーとはこういう香り」
という明確なイメージがあるようです。


次に向かったのは、パリのオペラ地区にある
フラゴナール(Fragonard)の香水博物館。
香水の都と呼ばれる南仏のグラース(Grasse)で1782年に創業した
老舗香水メーカー・フラゴナールが経営する博物館です。
 
(各国からの観光客で賑わう香水博物館のエントランス)

運よく日本人ガイドさんがついてくださったので、
日本語で「グリーンティー」についての質問が可能に。

彼女は「私は香りの専門家ではないので詳しくは分からないけれど」
と前置きした上で、
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・フランス語で緑茶は「thé vert」。
・フラゴナール社には「thé vert」と名のついた製品が複数あるが、
 この博物館に掲示してある「フラゴナールの香りの原産地一覧」に「緑茶」はない。
・フレグランスの元となる香油の抽出方法には様々なものがある。
 どの方法でも、抽出した香油の香りと、お湯で出したお茶の香りが
 同じになるとは限らない。
・「グリーンティー」は茶葉成分由来の香りではなく、
 「海」のように、抽象的なイメージの香りである可能性も高い。
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と教えてくださいました。


結果、現時点での結論は、以下のようになりました。
・「グリーンティー」は、フランス人がイメージする「緑茶」のイメージのようだ。
・原料は不明。

碧香堂での「お線香の香り記述」で「グリーンティー」の分類に悩んだあげく、
」「オリエンタル」と同じ「オリジナルフレグランス」に分類した私。
この判断は間違ってはいなかったようです。

しかし、「グリーンティー・フレグランス」の謎は深まるばかり。
調香師さんにお会いする機会があれば、ぜひ質問してみたいと思います。


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